過去の実施の様子|2021年

2021夏の実施報告

こ どもたちの幸せや安全・安心な社会を創るための「キッズデザイン」の視点で、「未来のあそびのデザイン」「未来の住まいのデザイン」のいずれかのテーマに 分かれ、学生が商品・サービスのアイデアを出し、協力企業へ提案しました。2021年度も全国から19名の学生が集まりました。


協力企業

株式会社ジャクエツ

テーマ:未来のあそびのデザイン

世界を、ちょっとだけ動かしてみよう。

偉大なる発明も、世界を変えた公式も、あそびから生まれた。あそびは、すべての創造の源です。

あそぶ力を伸ばすことは、未来を切り拓くこと。あそびから、こどもは無限の力を羽ばたかせていきます。

「未来のあそび」について、私たちと一緒に見つめ、考え、創造してみませんか? 答え合わせは100年後に。

参考:https://youtu.be/RCjRj-2-Ou8?list=TLGG2Ps2klQAldIwNDA4MjAyMQ

企業HP:https://www.jakuets.co.jp/

積水ハウス株式会社

テーマ:未来の住まいのデザイン

コロナの影響によりライフスタイルが大きく変化しています。家での暮らしも見直され、働き方もオフィスワークだけでなく、テレワーク、ノマドワークやデュアラーなど、多様化しています。これからは住まいも大きく変化していくことでしょう。

“未来の住まい”はどうなるのか。“家”にとらわれるのではなく、“未来の住まい”をデザインしてみましょう。


参考:https://www.sekisuihouse.co.jp/line/happy/top/

企業HP:https://www.sekisuihouse.co.jp/


実施内容


未来のあそび:ネイチャーチーム
「いたずら隊!」

・どんな課題を解決するアイデアか

現 代社会において人間関係の希薄化が進んでいる。大きな要因はインターネットの普及である。直接人と会わなくても簡単にコミュニケーションをとることがで き、同じような趣味や価値観を持った人とだけ関わることができる。趣味や考え方の違う人とは関わらないという選択が容易にできるため現代人は他人に深く干 渉することを好まない傾向にある。そのような社会で成長している子どもたちに、新たなコミュニティを提供し人間関係の構築や積極性を身に着けることを促 す。

 

・その課題はSDGsのどの目標と関係しているか

この課題は「10 人や国の不平等をなくそう」に関係している。人々が交流を増やし、年齢・性別・障害・人種などの違いに関わらずそれぞれの関係を構築していくことで、各々 の価値観や能力などを共有することが差別や偏見をなくすことに繋がる。子どもたちが新しいコミュニティに入ることで自分とは違う価値観や考え方があること を知りその中でどのように振る舞っていくのかを学ばせる必要がある。

課題を解決するためのアイデアはどのようなものか

「い たずら隊」という、お化けにいたずらを仕掛けていきながらゴールを目指す体験型施設。ターゲットは年長から小学校低学年、人数は1チーム3~5人、所要時 間は15~20分。登場するお化けは映像で立体的に映し出されたもので、触れることもでき、子どもたちがいたずらを通して仲間意識を得られることを目標と する。3つのステージがあり、いたずらを連想させるようなワードをステージの入り口に掲示し子どもたちなりに考えながら進んでもらう。第1ステージではハ ラハラ・ドキドキしながら、第2ステージでは体を使って、第3ステージではお化けを落とし穴に落とすといういたずらを仕掛ける。第3ステージでは1人1つ ずつ輪を配り、その輪より大きいお化けをどうやって落とし穴に落とすかを考えてもらう。輪が一直線になるようになっているのでチームのみんなで協力すれば 落とし穴を作ることが出来るようになっている。このように新しいコミュニティの中で力を合わせることが必要不可欠であることから仲間意識や個性の尊重を促 し、自分たちなりに考えることで問題解決能力を養うことが出来る。

 

事務局より>

人間関係の構築や 積極性を身に着けることを促す方法として、何を提供すればいいか、というところでたくさんアイデアを出していましたね。そのアイデアを絞り、本当にその方 法で目標としていることが達成できるのか、というのを考え深めていきました。「いたずら」という子どもがワクワクするようなキーワードが出てからも、その 切り口で本当に社会性を育めるのかという問いにも真剣に向き合ってきました。アイデアを絞り固めていく過程は大変難しく、時にどうすればいいのかと立ち止 まってしまうこともありましたが、よくひとつのアイデアにまとめきりました。


未来のあそび:sheチーム
「はいたっちずかん」

・どんな課題を解決するアイデアか

こ のアイデアは、2つの課題解決を目的としている。1つ目はデジタルデバイスの多用により子どもたちがリアルに触れる機会が減ること、またそれによって興味 関心を持つ機会が減ってしまうことである。2つ目の課題は文化や性別の違いに対する差別や偏見である。幼いころから五感を使ったさまざまな体験をすること でリアルに触れ、多様な文化や価値観を知ることで偏見をなくすことを目的としている。

 

・その課題はSDGsのどの目標と関係しているか

「4 質の高い教育をみんなに」、「5ジェンダー平等をみんなに」、「10.人や国の不平等をなくそう」、「15陸の豊かさも守ろう」と関係している。新型コロ ナウイルスによってオンラインでの授業やイベントが急激に普及したことも相まって子どもたちの「ホンモノ」に触れる機会が減少しており、人との直接的な交 流も少なくなっている。「ホンモノ」に触れることは子どもたちの成長のために重要であり、色々な人との交流は文化や価値観の違いを知り受け入れることに繋 がる。また、子どもたちが植物や動物に直接触れることによってそれらを身近に感じ、守ろうという意識を芽生えさせることにも繋がる。

・課題を解決するためのアイデアはどのようなものか

「は いたっちずかん」という本物の動物の“手”に近い感触でタッチできる商品である。頭が柔らかいうちにいろいろなものに触れてもらうことで、実際に触れてみ ないとわからないことや自分が想像していたものと違う場合があることを子どもたちに気づいてもらうためのアイデアで、ターゲットは5歳くらいの未就学児。 子どもの身長よりも大きい本のような形をしており、左側にはタブレット、右側には動物の説明と立体模型が飛び出る仕組みが設置されている。設置場所は図書 館の入り口を想定しており、タブレットにその日指定された動物の絵を描くとリアルな温度や質感を持った動物の手が出てきて触れることが出来る。また、世界 中の子どもたちが描いた絵を見ることも出来るので他国の子どもたちがその動物に対してどのようなイメージを持っているかを知ることが出来、子どもたちの中 で世界の多様性を知るきっかけとなる。体験後に子どもたちが動物保護や、他国の人とのグローバルな活動をしたいなどの興味を持つことがこのアイデアの目標 である。また将来は学校などに設置することや動物園が動物を展示するだけでなく保護する場所になると想定し、動物園に設置することも想定している。

 

事務局より>

2 日目のキッズOSワークショップで出た「はいたっちずかん」の方向でアイデアを具体的にしていきつつも、本当にこの方法でよいのか、別のアイデアを出して みたりと何度も考えましたが、「はいたっちずかん」に戻りアイデアを深めていきました。留学生とのコミュニケーションも初めは難しいようでしたが、次第に 意思決定のタイミングや説明の方法を言葉だけでなく、絵や写真で示したりとスムーズになっていきました。その確認がチーム全員の意思決定のプロセスにもな り、チーム全員が納得したアイデアを出すことができました。

 


未来のあそび:とにかく自由チーム
「ototori」

・どのような課題を解決するアイデアか

こ のアイデアは、子どもたちの体験の貧困を解決するアイデアである。昔は虫取りなど外遊びの体験が多くできた。しかし、現在は、親が遊び方を知らなかった り、昔より禁止が多くなったり、安全管理に敏感になったり、ゲーム遊びが主流になったことで、外遊びをする機会が少なくなり、外遊びで体験をする機会も少 なくなっている。

 

・その課題はS D Gsのどの目標と関係しているか

体験の貧困という課題はS D Gsの「1.貧困をなくそう」と「4.質の高い教育をみんなに」に関係している。外遊びの体験をする機会が少なくなることで、虫取りであればどのような方 法でしたらより虫が取れるようになるのかなど子どもたちの発見や考える機会も少なくなってしまう。そして、発想力や柔軟性も伸びなくなってしまうなど子ど もの成長の幅が狭くなり、将来の仕事の幅も狭くなってしまう可能性があるため、体験の貧困は目標1と4に繋がっているのだ。

・課題を解決するためのアイデアはどのようなものか

『ototori』 は、虫取りのように、デバイスで音を拾い、音を集めて音楽が昔のように体と環境さえあればもっと身近で簡単で自由に作れるものである。対象は幼稚園や保育 園に通う子どもで、直接的で身近な音楽体験をototoriで叶えることができる。ototoriの仕様は、デバイスで音を拾い、これをA Iのクラウドに割り当てることで雑音を消し必要な音のみを抽出、そして、抽出した音をブロックに割り当て、ブロックの音は壁に当てられ、配置によって多様 な音楽を奏でることができる。音の集め方は長押しで録音開始し、手を離すと録音終了といったシンプルな方法である。ブロックの機能は、デバイスとの交信 や、ブロックに送信された音が壁に送られる機能があり、ブロックをはめる壁はブロックの音情報を読み取り、順々に音を鳴らすことができる。デバイスは子ど もに合わせた可愛らしいカラーバリケーションで、G P Sの見守り機能がついている。ブロックも様々な色や形があり、音に合わせて自由に組み合わせて選べる。また、アプリと連携してブロックの音を編集でき、大 人と子どもたちで協力し、一緒に音楽を作ることができる。小学生以上は自分だけで音楽作りに体験することができる。

 

事務局より>

ア イデアソンはアイデアとマラソンを掛け合わせた造語ですが、こちらのチームはマラソンというより「シャトルラン」と言っていました。何度も目的と提案する アイデアの方向性が間違っていないかを、確認しながら一歩ずつ進めていきました。最終日の提案に向けてしっかりと時間配分を決め、目的を確認しながら進め ることで、着実に毎日、毎時間一歩ずつ進めていき、素晴らしい提案をされました。


未来の住まい:SRA-HOUSEチーム
「ミックスルーム」

・どんな課題を解決するアイデアか

日 本の子どもたちは海外の国々の子どもたちに比べて自尊感情が低く、将来の夢が描けない傾向にあるという課題がある。日本の子どもたちの自尊感情が低い原因 の1つとして「まわりに迷惑をかけないように育ってほしい」という保護者の思いが諸外国に比べて強いことが挙げられるようだ。そこで子どもの自尊感情を育 み将来に対する希望を持たせる家づくりを提案する。

 

・その課題はSDGsのどの目標と関係しているか

こ の課題は、「3すべての人に健康と福祉を」「4質の高い教育をみんなに」「8働きがいも経済成長も」「12つくる責任つかう責任」に関係している。自己肯 定感はメンタル面で健康に深く関係し、また自分に自信がつくように育てられそれを仕事に良い方向に活かすことが出来れば働きがいにもつながるのではない か。

・課題を解決するためのアイデアはどのようなものか

「ミッ クスルーム」という部屋で、SHARE・RELAX・ACTIVITYの3つの観点から子どもの自尊感情を育み将来に対する希望を持たせることが目的であ る。SHAREの面では共働きが増えたこと、インターネットの普及により家族と過ごす時間が減っていることを問題視し、家族の暮らしで共通しているもの= 「食」という発想から、キッチンとダイニングを中心にした部屋づくりを行う。自動で自由に動かせる壁を作ることで好みの空間をつくることができ、さらに保 護者はキッチンから子どもを見守ることや子どもから家事のお手伝いをする意識を誘発することもできる。RELAXの面では仕事や家事のストレスを解消し保 護者の気持ちに余裕を持たせることで子どもを気にかける時間を増やし、自尊感情を育む。ショーケースや子どもでも楽しく片付けできるようなカラフルハン ガーを設置する。ACTIVITYの面では、運動できる住まいをモットーにインターネットの普及による運動不足を解消させることを目的としている。購入し ても子どもが大きくなったら使わなくなってしまいがちなアスレチックハウスをレンタルすることで手軽にし、運動する機会を増やすとともに子どもの「でき た!」を生み出し、自己肯定感を与える。

 

事務局より>

子どもたちが自尊感情を高めるための住まい のアイデアとして、子ども視点と親視点から提案をしていきました。コンセプトの「SHARE・RELAX・ACTIVITY」をチームでひとつずつアイデ アを出しながら進めていきつつ、3人がそれぞれSHARE担当、RELAX担当、ACTIVITY担当と決め、アイデアを膨らませていきました。初日に決 めたチームのコンセプトを最後まで大切にし、考えたアイデア提案でした。


未来の住まい:igokochiチーム
「ねばーらんど」

・どんな課題を解決するアイデアか

共 働き、祖父母との別居など核家族化が進んでおり一つの家庭内だけでは子育てが難しくなっていること、ご近所付き合いが減っていることなどの課題を解決する ことが目標である。また街や地域で助け合う関係性も薄くなっているので、新たなコミュニティを作ることで人間関係の希薄化を防ごうという思いがある。また 未開発の土地を有効に活用することを目指す。

 

・その課題はSDGsのどの目標と関係しているか

こ の課題は「3 すべての人に健康と福祉を」「4 質の高い教育をみんなに」「5 ジェンダー平等を実現しよう」「8 働きがいも経済成長も」「10 人や国の不平等をなくそう」「11 住み続けられるまちづくりを」「12 つくる責任つかう責任」などたくさんの目標と関係している。年齢・性別問わず住みやすいまちづくりをする上では、福祉・教育・平等・経済など全ての面で必 要不可欠である。インフラや公共事業を充実させることで地域の人間関係や助け合いも可能になる。

課題を解決するためのアイデアはどのようなものか

「ね ばーらんど」という1つの街のような空間で、シングルマザーやシングルファーザー、共働きの夫婦、子ども好きな独身者などをターゲットに子ども(幼稚園か ら小学生)が主役の街をつくるというアイデア。子どもの手が届く、低めの自販機や公共スペースにポップなイラストを描いたり、住宅をカラフルにしたりする ことで子どもたちが見ているだけで楽しめるような空間づくりを行う。また、子どもだけでなく大人も楽しめるよう、バーやマッサージ店、ゴルフ場などの施設 も建てる。公共スペースを中心としてその周りに路面電車を走らせ、さらにその周りに住宅を配置することで全員が公共スペースまで同じくらいの距離で、行き やすいようなインフラを整備する。また、子どもの成長などに合わせて住宅を自由に、簡単に移動することが出来る。住み替えが容易になることで各々の時期に あった家に住むことができ、生活に対する満足度を上げる。公共スペースではクリスマスやハロウィンだけでなく、手話教室や防災訓練などの地域の交流を深め るイベントがたくさんあり人々のコミュニケーションをとる場を設ける。

 

事務局より>

新たなコミュ ニティを作ることを目的に、子どもが中心の街づくりについて、住む家だけでなく、公共施設や鉄道、レジャーなど様々な観点から提案されました。アイデアが 行き詰まることもありましたが、個々で調査を行い、その結果を皆で供給して新たなアイデアへと広げていくなど、答えのない課題に対してしっかりと考え提案 されました。

 


未来の住まい:ツナマヨ 
「かまくらハウス」


・どんな課題を解決するアイデアか

子 育てのしやすい環境が整っていないことを課題として挙げている。仕事と子育ての両立が難しいこと、コロナによって働き方が変わったこと、医療機関や公共交 通機関が充実していないこと、貧困などで教育を受けられない子どもたちがいることを問題視する。コロナでテレワークが増え、子どもと家で1日過ごす時間も 増えたことで保護者が仕事に集中することを困難にしている場合がある。このアイデアは子育てと仕事の両立を目的としたアイデアである。

 

・その課題はSDGsのどの目標と関係しているか

子 育てと仕事に関する課題は主に「1 貧困をなくそう」「3 すべての人に健康と福祉を」「4 質の高い教育をみんなに」「8 働きがいも経済成長も」の目標に関係している。質の高い教育を受けるためには保護者の仕事と子育ての両立が必要不可欠である。コロナによって経済が不安定 であることに加え、子どもが家にいることで仕事に対する集中度が下がってしまっている家庭もある。

 

・課題を解決するためのアイデアはどのようなものか

こ のアイデアは「かまくらハウス」という商品で、5~9歳の子どもたちとその保護者をターゲットとしている。子ども部屋を作ることが出来ない家庭でも子ども だけのスペースを作ることが出来る。ぶつかっても怪我しないようにプラダンで作られており、高さ140cm・直径160cmで2人でも十分なスペースを確 保できる大きさとなっている。子どもが好む囲まれた空間をリビングに設置し、1人でも遊べるようなさまざまな工夫が凝らしてある。例えば、かまくらの内装 を自分でデコレーションすることやプロジェクターで絵本や風景を映し出すことが出来る。これらの機能で子どもの創造力を高め、家を学びの場にする。また貧 困な家庭に設置できるように価格は10,000円程度を想定し、教育ゲームをプロジェクターに入れ込むことで学校に行けない子どもでも学ぶことが出来る。 プロジェクターは5,000円程度でレンタルすることができる。また、複数の「かまくらハウス」を連結することもできるのでより多くの人数で楽しめ、探検 のような雰囲気を味わうこともできる。天井や窓を透明なシートで作ることで保護者が仕事をしながら子どもたちを見守ることができる構造になっている。

 

事務局より>

こどもOSワークショップで出た「かまくらハウス」というアイデアを、どんどん具体的にしていきました。大きさや素材、費用感まで提案されました。かまくらハウスの設計だけでなく、その中で子どもたちがお家時間を楽しんだり、学べる提案もされました。